終わらないコロナ禍に、激化する競争、今の時代にエステサロンが生き抜くことの難しさを痛感している人も多いのでは。
そんななか第一線で成果を上げ、サロンオーナーの皆様にとって“お手本的存在”といえる経営者が目指す“未来”についての話から、これからの美容業界の、サロンの、あるべき姿を探る。
エス通オンラインでは、8名へのインタビューを特別に掲載!
今回は、株式会社不二ビューティ/「たかの友梨ビューティクリニック」会長のたかの 友梨氏へのインタビューをご紹介します。
株式会社不二ビューティ/「たかの友梨ビューティクリニック」会長
たかの 友梨氏
1972年、本場のエステティックを学ぶために渡仏。帰国後の1978年に「たかの友梨ビューティクリニック」を設立。以来、美容家として多岐にわたり活躍。長年行なってきたボランティア活動の取り組みが評価され、2019年には紺綬褒章を受賞。
エステティックはぜいたく産業から健康産業へ
新型コロナウイルス感染症との付き合いも4年目を迎えようとしています。幸いなことに弊社は、コロナ禍においても大きな痛手は被っておりません。それはひとえにスタッフのおかげだと感謝しています。弊社のスタッフは平均勤続年数も長く、これまで重ねてきたさまざまな経験を糧に、コロナ禍という未曾有の事態においても“エステティックの価値”を示し続け、力強く会社を支えてくれました。
私は、以前からエステティックは“オルタナティブ・メディスン(代替医療)”の一翼を担う仕事だと考えています。体と心はつながっているので、体の状態が悪いと心まで落ち込みます。本来、人間は「睡眠」「食事」「運動」というトライアングルを守っていけば、簡単には病気にかからない体になりますし、気持ちも明るく過ごせます。「調子が悪いな」と感じたら、すぐに薬に頼るのではなく、まずは運動やマッサージ、精油をたらしたお風呂につかってみるといった行動が大切なのではないでしょうか。加えてサロンに行けば、「髪型が変わりましたね、素敵ですね」と家族も気付いてくれないようなことに気付き、声をかけてくれるスタッフも。“自分を気にかけてくれる存在”は心のケアにつながります。ですから私は、エステティックは“病気にならないためのクリニック”のようなものであり、未病の段階から、病気にならない体をつくる場所だと考えているのです。また、コロナ禍を経たことでお客様の健康意識は高まり、それに伴い、今後エステティックの重要性もますます高まっていくと思います。
仕事にやりがいを感じさせる人材の育成がカギに
一方で、エステティック業に従事する人材の減少には、少し危惧を抱いています。エステティシャンという仕事は、「人に奉仕する」仕事。相手に対する「こうしたらもっと気持ちいいのではないか」というある意味“おもてなし”の気持ちから始まります。「やってもらうことが当たり前」になりつつある世の中なので、適性のある人は減っているかもしれません。そんなご時世を踏まえ、弊社では研修に力を入れています。現代の若者は本当にいい子が多いし、打てばきちんと響きます。実際、社員から私に直接「こんなことを教わりました」とメールが送られてくることもあるのですが、ポイントをしっかり掴んだ内容を書いてきます。
どの社員も「こんなにトップを慕ってくれる社員はほかにはいないのでは」と思いますし、やる気に満ちています。そのような社員に囲まれる秘訣は「山本五十六の教育における4段階法」にあるかもしれません。つまり、「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、褒めてやらねば、人は動かじ」の理念です。そして、そこにもう一つ加えたいのが「叱ってやる」こと。もちろん、叱るときは人前ではなく個人で、がポイントです。「叱られる」経験が圧倒的に少ない若者たちは、“愛情”を持って「叱られる」ことで、その人のことを好きになり、その人のためにがんばりたいと思うようになるもの。小さなことですが、それで人生が変わることもありますし、そういうことが仕事へのモチベーションにつながるのではないでしょうか。
“古くて新しい”施術 もう一度、原点のアロマへ
「たかのといえばハンドマッサージ」といわれているものの、実は「機器をもっと導入しよう」としていた時期もありました。ですが、やはりお客様が私たちに求めているのは、クオリティの高いハンドマッサージであると改めて実感。2023年は原点に戻って、アロマの知識をもう一度徹底的に勉強しようと思っています。
そう考えたのは、私自身、アロマの素晴らしさを実感する出来事があったから。昨年、足のけがで入院したのですが、退院したときには、肌がカサカサになり、かゆみも出てきて……。ところが弊社のサロンで施術を受けたら、毛羽立っていた肌が一度できれいになり、かゆみも取れました。体も軽やかになり、声までも高く! 本当に驚き、精油を使うことがどれだけ必要かを再認識しました。
エステティシャンが施術するうえで気を付けたいのは、マッサージ屋さんになってはいけないということ。私たちが行なうのは、あくまで“トリートメント”。どんな精油を使うのか、手の動きはスローなのか早いのか……。深く勉強していくことでより効果が出せるようになりますし、体を正常な状態、そしてさらによい状態へ誘うことができるはず。そういう力があるからこそエステは代替医療の一環といえますし、「人々の健康を支えることで、国に貢献しているんだよ」と社員に常々話しているわけです。こうした使命がある限り、そして仕事にやりがいを感じてくれる社員がいる限り、エステティックの未来は明るいのではないかと感じています。
たかの友梨ビューティクリニック |
世界の伝統技術や先端メニューを取り入れたサロンを日本全国に展開。“オルタナティブ・メディスン”としてのエステサロンを目指し、美のセラピストの育成と、女性が活躍できる環境や制度の整備に尽力している。 https://www.takanoyuri.com/ |
エス通本誌の注目企画「エステティックへ真摯に向き合うサロン経営者12人が語る 美容業界の目指すべき未来とは」をご紹介しました。(2023年1月号掲載)
エス通本誌ではより多くのサロン経営者のインタビューをご覧いただけます。ぜひあわせてチェックしてみてくださいね!