「母のようにならなければならないという固定観念を解放してくれたバイブル」【「クリニカルエステ花蔵」代表取締役社長 三谷愛先生】あの人のバイブル vol.3

「母のようにならなければならないという固定観念を解放してくれたバイブル」

 「あの人のバイブル」は、エステサロン業界に大きな貢献をされているオーナーやベテランオーナーの先生に、人生を変えるきっかけをもらったバイブルを教えてもらう企画です。

 第3回は、笠原道代先生にご紹介頂いた、「クリニカルエステ花蔵」の代表取締役社長三谷愛先生のバイブルを教えていただきます。

お話をうかがったのは

三谷愛 先生

一般社団法人エステティックグランプリ女性初の理事長を第8期・第9期の2年間務める。「クリニカルエステ花蔵」を埼玉県を中心として10店舗展開する株式会社エルピス代表取締役。エステティックグランプリでは第10期も理事を務め、エステティック業界発展のために奔走を続ける。


Instagram:@hanakura_esthe

岩崎夏海著『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら(ダイヤモンド社)』

 呉服屋からエステ業界に転身し、現在では10店舗を展開する花蔵の2代目として活躍され、日本一のエステサロンを決める「エステティックグランプリ」の理事を務められた三谷先生。

 三谷先生がバイブルとして選ばれたのは、NHKでアニメ化もされ、「マネジメント」のブームを巻き起こしたベストセラー、通称「もしドラ」です。

難しいマネジメント理論を分かりやすく理解できる良著

 高校野球部のマネージャーが、マネージャーの勉強のために誤って「経営学の父」と呼ばれることもあるピーター・ドラッカーの「マネジメント」を購入してしまう。はじめは難解に感じた内容も野球部のマネジメントにも活かせると気づき、弱小だった野球部が甲子園を目指していくストーリーで本は進みます。

 三谷先生も、本の主人公と同様に、本作を通してドラッカーのマネジメントが腑に落ちたそうです。

作品との出会いを教えて下さい

 作品との出会いは15年ほど前のことになります。当時は経営について勉強をしていたので、セミナーや外部研修などにも積極的に参加していましたが、薦められた経営書などを読んでも小難しくて分かりませんでした。

 特に、ドラッカーのマネジメントの本は難しく、リアルな経営に活かせないと思って手を出していなかったのですが、表紙がマンガ的なイラストで読みやすそうと思ったのが本作を手に取ったきっかけです。また、当時は「もしドラ」がブームになっていたこともきっかけのひとつですね。

その本と出会った時のご自身はどういう状態でしたか?

 私は2代目ですので、花蔵は母が創業したサロンです。最初はいちスタッフとしてサロンに入り、教育部・営業部などで役職を与えられるようになり、本作と出会ったのはちょうどプレイヤーからマネジメントに転換していた時期でした。

 母に育てられた幹部スタッフは、自分よりも年上でエステティシャンとしての経験も長い方ばかり。当時はすでに5店舗を展開しており、30人〜40人いるスタッフからは、オーナーの娘ということもあり、仕事に対する本気度やどういう人間なのか見定められているような感覚がありました。 

 (過去の記事で)日野先生も紹介しておられた「日総研」などにも参加して経営の勉強をしていましたが、年齢が若かったこともあり自分のカラーややり方が見いだせずにいました。当時は、母の作ったサロンをどのように成長させていくのかが見えずに悩んでいた時期でもあります。

作品との出会いをきっかけにどのような変化がありましたか?

 母は表に出るタイプではありませんが、娘の私からみても敏腕経営者だと思っています。現在も花蔵の象徴としてスタッフも信頼をしている存在です。 

 女性経営者としても、30〜40年前の、まだ女性が自立して社会で働くのは困難な時代に花蔵を創業して、男性以上に経営を強い精神力で乗り越えてきた強い女性です。リーダーシップも本当に強く、そんな母を見て育った私も「強くなくてはならない」「リーダーとはこうあるべき」という固定観念に縛られていました。 

 今考えると、親子でも似ているところはあっても個性や強味が違うのは当たり前なのですが、当時は母のようにならねばならないという感覚が強く、葛藤していました。目も吊り上がって人相が変わってしまうほどで、長く勤めてくれているスタッフには「当時の社長は本当に恐ろしかった」と言われます。

 そうした葛藤に悩んでいた時期にこの本と出会い、野球を知らずにプレイヤーでもない選手を支えるマネージャーが、選手にやる気のないダメダメチームだった野球部を、マネジメントの手法で個々の素質を伸ばしやる気を引き出すことで、最終的に誰もが無理だと思った甲子園に行くというストーリーに、自分が目指すべきマネジメントは“これ”だと重ねることができました。

この本をバイブルとして挙げられた理由を教えて下さい

 私には、母のような強烈なリーダーシップは難しい。でも、自分なりにスタッフと本気で関わっていけば、強いチームにすることができる。迷っていた時期にこの本に出会えたことで、自分の進む方向が見出せたのがバイブルにあげた理由です。

 本の内容はとても分かりやすく、マネジメントってこうなんだと言うことが腑に落ちました。今の私には活きていると感じています。

 現在の花蔵には80名ほどの社員がいますが、マネジメントを任せている店長にもこの本を薦めています。

固定観念にとらわれずに自分らしくスタッフを輝かせるマネジメントを学んだバイブル

 強力なリーダーシップを持つ先代とのギャップに悩まれたこともあるという三谷先生が、固定観念を取り払うきっかけにもなったというバイブル。同じように悩まれているオーナーにも参考になる部分は多いのではないでしょうか。

三谷先生からのメッセージ

 スタッフを採用するということは“その人を活かしていく”ことであると考えています。スタッフが生き生きと働くことで、結果としてサロンの業績やお客様満足につながっていくのではないでしょうか。

 人材育成には正解がありません。私自身も試行錯誤しながらサロン経営をしていますが、もちろん良いことばかりでも上手くいくことばかりでもありません。それでも、スタッフが輝いた時がオーナーにとってのやりがいにもなると感じています。

 当時の私と同じように、人材育成やマネジメントに悩んでいるオーナーさんに、この本を1回手に取って読んでもらえれば、シンプルで分かりやすくマネジメントの勉強をする手助けになると思っています。

 10店舗80名以上のスタッフを育てる三谷先生のバイブルは、チームとしての可能性を信じて人を動かすコツを知ることができるベストセラーです。読み物としても読みやすいストーリーになっているので、肩の力を抜いて本を開いてみるのも良いのではないでしょうか。

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