菌活マスターへの道!菌と上手につきあって肌と体を最適化する(前編)
除菌・抗菌アイテムは多く、「菌」と聞くとそれだけで体に害を与えるもののように思ってしまいますが、美容のためには菌を活かす「菌活」は非常に効果的です。菌と上手につきあうことが、肌と体の内側からのキレイにつながります。前編では、専門家お2人に菌活についての基礎から教えていただきます。
除菌を意識するあまり、体や肌の必要な菌までなくしていませんか?
どうにもならなかったお客様のその不調、実は「菌活」で解決できるかもしれません。基礎知識からアイテムまで、知っておきたい“正しい菌活”をまとめました。
美容マニアなら詳しい人も多い菌活。エステティックサロンの立場として正しく濃いアドバイスができるように、まずは基礎知識からおさらいしていきましょう。
見えたキーワードは「多様性」〜菌活を取り入れる前の準備やバランスの重要性を聞く〜
“エステティックサロンが提案したい正しい菌活”。
今回は、美腸カウンセラーRとして活動し、腸内環境の根本解決をめざしたメソッドを展開する田和さんと、バイオ× ITを主軸とした事業を手がけ、皮膚常在菌の検査キットの販売元である株式会社ワールドフュージョン代表の川原さんのお2人にお話をうかがいました。
それぞれ「腸内」「肌」の細菌について取材しましたが、両者の話から見えてきたキーワードは、菌の「多様性」です。
菌活は、体によい菌をとにかく取り入れればよいのではありません。取り入れる前の準備や、必要な菌の割合などを理解した上で、さまざまな種類の菌を育て、取り入れられる腸・肌の土台づくりが重要となることがわかりました。
その中でも、腸と肌とで少し異なる菌活のポイントとはどういった点になるのかを聞いていきましょう。
腸のお話
日本美腸メソッズ協会代表
美腸カウンセラー®健康管理士
田和 璃佳さん
URL:https://bityo-methods.com/
自身の便秘症からの改善経験から、東洋医学の視点をとりいれたオリジナル5色タイプ別腸診断を開発。腸内研究の第一人者である、東京医科歯科大学名誉教授の藤田紘一郎先生監修のもとまとめた”美腸Methods®”を全国に展開、講師として活動中。著書に『決定版「デブ菌」が消えて「ヤセ菌」が増える腸活×菌活レシピ100 女性のお悩みすべて解決』(徳間書店)など。
肌のお話
株式会社ワールドフュージョン代表取締役
川原 弘三さん
URL:https://www.w-fusion.co.jp/
医療機器メーカー、研究用試薬・機器・臨床検査薬の仕入れ・販売会社に勤務後、ITをベースにしたライフサイエンスに便利で斬新的なものづくりをテーマに、株式会社ワールドフュージョンを設立。バイオ関連分析ソフトウエア開発、微生物分析サービスなどを手がける。『日系バイオビジネス』での連載、『日系バイオ年鑑』の執筆ほか、翔泳社、現代医学社などでも著書多数。
Q そもそも“菌活”ってどういう活動なの?
近年、菌活という言葉を聞くことが多くなってきましたが、菌活ってなに?とピンと来ていない方もいるかも知れません。
そもそも、菌活はどのようなものなのかという点から聞いてみました。
腸内細菌の多様性を追及、育成・活性させること(田和さん)
腸内環境の改善で便秘の解消や美肌をめざすのであれば、巷にあふれる対策にすぐに飛びつくのではなく、まずは腸活の本質である「菌活」から理解していただきたいと思っています。
菌活とは、腸内細菌の多様性を追求し、育成・活性させること。現代の日本人の腸には平均200〜1000種類の菌が存在*し、これは戦前の日本人の菌保有数の約1/3ほどと言われています。
自分が持てる腸内細菌の種類は生後1歳半〜2歳ほどで決まってしまうといわれますが、多様性を育てていくことは可能です。同じ花の種類の中でも赤や白、黄色があるのと同じように、さまざまな菌の育成・活性をするという視点が必要です。
*諸説あり。ここでは藤田紘一郎先生の研究に基づいた数字
バランスと多様性指数の2つの側面が重要(川原さん)
肌の菌活は大きく分けて、「善玉菌や悪玉菌を適切な割合に近づけること」と「多様性指数を高めること」この2つの側面からの活動になるでしょう。
一般に皮膚常在菌は4000種以上あるといわれていますが、検査キットなどである程度正確性を持って検出できるものは約2000種類くらい。その中でもサロンにいらっしゃる一般のお客様向けには、下記の図のように4種類に分けるとわかりやすいでしょう。
これらの菌には、それぞれに全体の皮膚常在菌に占める望ましい割合があります。これをもとに足りない菌を増やしていくとともに、全体の菌の多様性を高めていくことが大切です。
Q 体にとって有用な菌は積極的に摂ったほうがいい?
菌活と言われても、具体的に何に取り組むべきかわからない方も多いでしょう。
体にとって有用な菌を積極的に摂取するべきかを聞いてみました。
排除と摂取の2方向からのアプローチが必要(田和さん)
菌の栄養になるものを摂取することはもちろん大切ですが、腸内細菌の数は常に変化しているため、いつも同じ数存在しているとは限りません。
腸内環境が悪ければ菌が少なくなってしまい、本来プラスになるはずの摂取した菌が、マイナスからのスタートになってしまうことも。
本当に菌活で結果を出すためには、腸内細菌の栄養となるものを積極的に摂取して活性させると同時に、もともといる菌を殺す要因となるものを生活習慣から“排除していく”ことが必要です。
この考え方をしっかりと説明できるようにしておかないと、例えばお客様に腸活サプリをおすすめしても結果が出ず、ただ売りつけられたという印象になってしまうでしょう。
取り入れながらもバランスを意識しよう(川原さん)
4種の菌を指標に善玉菌を取り入れることは重要ですし、取り入れるほど美肌によいというデータもありますが、偏りが生まれることで多様性指数が低くなってしまうリスクもあります。
弊社の実験では、多様性指数が低いほうが「ニキビ・吹き出物ができやすい」という項目でオッズ比12倍となりました。続いて、「肌のツヤがない」「アトピーになりやすい」といった項目にもかなりの差が生まれる結果に。
皮膚常在菌のバランスを円グラフにした時に、どれか1項目が大半を占めているような状態よりも、まんべんなく分布し、その他の菌が多数見られるような状態にすることが望ましいですね。
Q 結果が出る「菌活」ってズバリどうすればいいの?
菌活の目的は美肌や健康な体づくりです。しかし、菌活が本当に効果があるのかどうかは目に見えにくい部分でもあります。
ズバリ、結果が出る菌活の方法を聞いてみました!
よい菌がパフォーマンスを発揮できる状態を目指す(田和さん)
人それぞれ腸内環境は違いますが、全員がめざすべきところは、腸内でよい菌たちがよいパフォーマンスを発揮しながら発酵している状態です。逆に言うと菌の数が少ない、バランスの悪い環境をつくらないということです。
先ほど申し上げた、菌を殺す要因となるものの代表格が、抗生物質と添加物です。薬に頼ったり、コンビニなどでご飯を済ませたりすることが多い今、知らず知らずのうちに劣悪な腸内環境がつくられています。
そういったものを避けるだけで、それは立派な「菌活」になります。そのうえで、発酵食品や食物繊維など、菌の栄養となるものを摂取すれば、しっかりと結果に結びつきます。
菌活に効果的なスキンケアアイテムの提案(川原さん)
皮膚常在菌は、年齢や食事・睡眠などの環境、季節によって数や種類が移り変わります。
まずはその時の自分の肌状態を、検査機関や検査キットなどで知ることが大切です。そのうえで、菌種の増減・またバランスを整えるケアをしていきましょう。
サロンでできる範囲内では、やはりスキンケアアイテムの提案が適切でしょう。化粧品の塗布では2週間、サプリメントなどの内服では2~4週間ほどで変化が現れてきます。
また、常在菌観点からのケアは、エイジング悩みよりニキビなどの炎症系の悩みに直結する傾向があります。お客様の悩みの状態によって、菌活アドバイスをすることをおすすめします。
菌活には多様性が重要!ただ菌を増やすだけではなくバランスの取れたアプローチを
専門家のお2人が声を揃えて言う部分が、菌活には多様性が重要という点です。
菌活では、体内の菌を積極的に増やすだけでなく、食事や睡眠などの生活習慣を見直すことも重要であるということがわかりました。
後編では、前編で学んだ菌活の考え方を土台に、エステサロンとしてお客様に正しい提案ができるためのポイントを解説します。
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