「健康」と「美」の教科書 今エステティシャンが目指すべき健康美への道

コロナ禍で人々は、「健康であること」が前提の上に「美」が成り立つと再認識しました。美の現場の最前線に立つエステティシャンだからこそ、そこを何よりも意識したうえで、接客・施術にあたりたいもの。エス通が考える「健康」と「美」の軸をもとに、今一度見直したい健康美へのアプローチについてまとめました。

エステティシャンが目指すべき健康美のポイントは3つ!

「健康美」といわれても何をすればいいのかピンとこない方も多いのではないでしょうか。
そこで、まずはアプローチの方法から紹介します。

お客様の健康美を実現するため、エステティシャンが心がけるべきポイントは以下の3つ。

1 精神面 mental

健康美はモチベーションづくりから。心が前向きで、自分に自信を持っている状態が心身の健康といえます。

2 肉体面 physical

痩せすぎも不健康の原因に。健康美のためには、適正範囲内で理想の体型に近付けるかどうかが腕の見せどころ

3 知識面 knowledge

健康美を向上させる美容法や食事法を自分で身に付けられるかも重要。お客様にはここまで指導を。

それぞれの具体的な方法と注意点を紹介していきます。

1. mental

健康美を手に入れるには、まず心から。適切なメンタルケアで美しさに対するお客様のモチベーションを高めましょう。見た目を美しく整えると同時に、自分自身をポジティブに見つめなおす後押しは、エステティシャンだからこそできる部分もあるはず。
明日から実践できる3つのテクニックを紹介します。

教えてくれたのは……
メンタルスキンケア Lab. 代表 恒吉 美花さん (http://mskinlab.com/
自身の実体験から、メンタルの不調の改善を目指したエステ技術「メンタルスキンケア」を開発。同メソッドに基づくサロン・スクール・研究所を運営する。

1 毎回の変化を丁寧に伝えて健康美へのモチベーションUP!

人は誰しも違った美しさを持っています。しかし多くのお客様は自分に自信がなく、自己評価も低いものです。だからお客様の魅力を客観的にお伝えするだけでも自信につながります。またケアを継続するなかで、毎回具体的にどう変化したかをていねいにお伝えすることも、お客様のモチベーションを高めるために有効です。

2 地道な積み重ねが大切だと理解してもらう 

睡眠時間、食事バランス、運動量――メンタルヘルスの根底にあるのは生活習慣の積み重ねです。生活習慣は一人ひとり異なるうえに一気に変えることが難しいものですが、少しずつ無理なく健康美を実現していけるよう、お客様と一緒に計画を立てましょう。

3 オンラインを利用しておうち時間もお客様をフォロー!

人との物理的な距離が生じ、世の中の見通しも立たない今、不安を感じている方は少なくありません。そこで活用したいのがオンライン。悩みを伺ったり化粧品の感想を聞いたりと、積極的にフォローしていきましょう。健康美に関して普段伝えている事柄をYouTubeやSNSで公開し、それを見て復習していただくのもよいでしょう。

「美人は知識で作れる」という信念のもと、話題の化粧品や美容情報から、自分を本当に美しくするものを選べるようになる“教養”をYouTube上で解説中!
https://www.youtube.com/channel/UCzBb2s9DSwq0Incep1cguWQ/videos

2. physical

身体の美しさを実現するのに必要なダイエット。
ですが、無理な減量は肌や健康を阻害するなど健康美にマイナス面が多いのでNG。
お客様がそんな状況に陥らないよう、健康的で美しい体へ導くダイエットサポートを紹介します。

ダイエットは方法を間違えれば逆効果に

ダイエットは糖尿病などの疾病予防の観点から必要である一方、方法を間違えるとかえって健康美を損ねてしまう場合も。痩身などの施術に加え、食事制限や運動など優先されるべきアクションとその理由がしっかりお客様ごとに説明できているか自身の現状を知りましょう。

過度なダイエットには健康リスクが

極端な栄養摂取制限や特定の食品のみを摂取する偏ったダイエットにはリスクが付きもの。食物繊維不足による便秘、カルシウムやビタミンD不足による骨粗鬆症、鉄分不足による貧血や月経異常など、必須栄養素の不足は健康を損なう可能性があることをしっかりお客様に伝える必要があります。

バランスのよい食事で栄養面からもお客様をサポート

ダイエットにはカロリー制限と運動の併用が必要。そして、バランスのよい食事ももちろん欠かせません。必須とされる栄養素は数多くありますが、女性の体質を考えた場合、とくに注目したい栄養素が、月経異常や貧血に影響する「鉄分」と、骨粗鬆症に影響する「カルシウム」。とくにカルシウム不足は、高齢期における運動器の障害(ロコモティブシンドローム)や虚弱(フレイル)のリスクを高め、要介護の原因となることも。ダイエットがこれらリスクの引き金とならないよう、栄養面からもサポートし、お客様の健康を支えるだけでなく、サロンの信頼度の向上にもつなげたいものです。
以下、この2つの栄養素に焦点をあて、摂取量の目安や摂り方を紹介。お客様へのアドバイスに役立てましょう。

●カルシウムの摂取推奨量(mg/日)

男性女性
18〜29歳800650
30〜49歳650650
50〜69歳700650

骨粗鬆症予防のための食事Point!

1.バランスのよい食事に上手にカルシウムを含む食品を摂り込む
例) 副菜の「レタスとキュウリのサラダ」を「ひじきの煮物」に。
カルシウム含有量:15mg→168mgにUP

2.適度な牛乳・乳製品を摂取する
1日:牛乳200ml分に含まれるカルシウムが目安

●鉄分の食事摂取基準(mg/日)

成人女性(20~49歳) 10.5mg(月経のない女性:6.5mg)
成人男性(20~49歳) 7.5mg

主な食品に含まれる鉄量

ヘム鉄含有食品例:豚レバー( 生5 0 g )6.5mg、鶏レバー(生50g)4.5mg、牛レバー(生50g)
非ヘム鉄含有食品例:調整豆乳(200g)2.4mg、糸引き納豆(50g)1.7mg、小松菜(ゆで75g)1.6mg

<参考>厚生労働省:生活習慣病予防のための健康情報サイト「e-ヘルスネット」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/

3. knowledge

いくらプロが手を尽くしても、お客様自身が確かなケアを習慣化できなければ健康美は成り立ちません。お客様が日々の生活の中で健康美を高めていけるよう、確かな知識に基づいてサポートするのもエステティシャンの仕事。
生活していくうえで欠かせない、食事とサプリについての知識をQ&Aにまとめました。

インナーケアにまつわるQ&A

教えてくれたのは……
日本ニュートリション協会サプリメントアドバイザー 西出薫さん
ミス・ワールド2003世界大会出場。2004年にサプリメントアドバイザーの資格取得後、モデル事務所にてダイエット・スキンコンディションの講師として活躍。(http://www.supplementadviser.com/blog/2004/11/01/82

日本ニュートリション協会とは?
日本におけるサプリメントの普及に寄与するべく、サプリメントアドバイザーの育成事業を運営。講座ではアメリカの栄養学を基にした栄養素や関連する法令までを体系的に網羅できる。(http://www.supplementadviser.com/

Q お客様が健康的に理想の体型になれるように指導できることは?

A サプリメントを活用しながら無理なくケアを続けられるフォローを。

 きれいになった体を保っていただくために、皆さん毎日の食事や運動指導をされると思い ます。それと同時に有効活用したいのが、サプリメントです。人間の脳はカロリーか栄養 素、どちらかが不完全な状態だと、「補充せよ」と指令を出すつくりになっています。し かし、必要な栄養素を食事だけで補おうとすると、脂質や塩分も一緒に摂ることになり、 完全にカロリー過多。そこで、必要な栄養だけをピンポイントで摂ることができるサプリ が活躍するのです。さらにいうと、サプリメントや栄養に関する公的資格をもつとご自身 の勉強にもなり、お客様へのアドバイスにも説得力が増すと思います。

Q サロンにはどんなサプリメントを置いておくべき?たくさんそろえられないのですが  ……

A すべての悩みに効くサプリはありません。施術効果を引き出すものを厳選して。

 もちろん、あらゆる種類のサプリメントを置いておく必要はありません。サロンでのサプ リメントの販売は、あくまで施術の延長線上にあるもの。施術の効果を出しやすくした  り、持続させたりするために、サロンのコンセプトに合致した成分を含むサプリメントを 用意するといいでしょう。「話題の成分だから」と宣伝するわけではなく、施術との関係 性が説明できると、セールストークに説得力が生まれます。

Q サプリメントを導入するときはどこを見て判断すればいいの? 何が信頼できるものなの かがわかりません。

A 製造における“安心・安全”を法的にクリアしているかが目安です。

 健康食品にまつわる法制化が進んでいない日本において、国からの認可という点で拠りど ころにしてほしいのが、GMP(適正製造規範)の認証を受けているかどうか。医薬品で は製薬メーカーに義務として課せられており、健康食品では業界の自主基準レベルでガイ ドラインが設定されていますので、その中でGMPにしっかりと則って製造されているも のを選びたいものです。また、品質という面で見るならば、医薬品の製造を行なっている かどうか、という点も一つの指標になるでしょう。

Q インナーケア商品を販売するハードルが高いです。どうしたら購入につながるの?

A 乗り気じゃないお客様にはNG。地道な信頼関係づくりがカギに。

 インナーケアは結局のところ、お客様自身が続けられないと意味がありません。無理やり買わせても、続かない、結果が出ない、という負の連鎖に。まずは日ごろの接客の中でお客様と信頼関係をつくっておくことが大前提。私も、モデルの食事指導をしていたときは、話し合いと提案をくり返し、その中で関係づくりをしていきました。時には厳しさをみせながらも誠実に接することで、お客様が提案を受け入れてくれる状態をつくれるとベストですね。

サロンに置くサプリの選び方は?

自分のサロンにどんなサプリを置いたらいいのか悩んでしまうという方のため、選び方とおすすめサプリを紹介します。
ポイントはサロンのコンセプトにあったサプリを選ぶこと。

フェイシャルサロンは…

セラミド(保湿)アスタキサンチン(保湿)DMAE(ハリ・弾力
化粧品にも配合されるような、肌の水分量を保持する成分のサプリはマスト。ハリや弾力を守るDMAEも近年注目を集めています。

ボディ(痩身)サロンは…

カルニチン(代謝)フコキサンチン(代謝)アフリカンマンゴー(食欲抑制)
代謝の材料となったり、エネルギー変換を補助する成分をチョイス。天然成分で食欲を抑えるものにも注目。

リラクゼーションサロンは…

GABA(リラックス)テアニン(リラックス)オキシトシン(多幸感)
ストレスを除き、リラックスへと導くアミノ酸系成分が代表格。質のよい睡眠をサポートするものにこだわりたいですね。

上記を参考に、施術内容にあわせて上手くお客様のニーズを掴みましょう。

One Point Advice

サプリ導入前にはメーカーの想いに共感できるかもチェック!
美肌・美容成分を、安全でより高い効果が望める状態で摂取できるかどうかが大切。メーカーのHPなどで代表の熱意や経歴をチェックすることもサプリの見極めのポイントです。

あなたのサロンに必要なものは?

お客様の健康美を実現するため、あなたのサロンに足りないポイントは見つかりましたか?不足点をカバーするには、新アイテムや新メニューを導入するのもひとつの手。
そこで、最後にあなたのサロンに必要なものが分かるチェックシートを用意しました。チェックが多かった項目を参考に、サロンに必要な+αを見つけてみてください。

Check sheet


□いろいろなトリートメントを試みたが、満足には至らなかったお客様がいる。
□いつもカウンセリングはシートに則って定型化している。
□サロンのコンセプトや施術自体を健康を軸にしたものに変えていきたい。
□カウンセリングなどの中で、お客様の不調改善につながる知識を提供したい。


□食事指導だけではお客様満足や結果出しに限界を感じている。
□女性ならではの不調や年齢による不調に悩んでいるお客様が多い。
□理念に共感し、信頼できる健康食品メーカーをまだ見つけられていない。
□継続しやすく、リピートにつながる店販品を充実させたい。


□健康や最先端の美容に関心の高いお客様の来店が多い。
□サロンに来店がないときでもサロンケアを維持できるような店販品を探している。
□美のプロとして、興味を持った商品はひととおり試してみたい。
□一人ひとりの悩みに寄り添えるような店販品をそろえておきたい。

☆エリアの☑が多いサロンは…

トリートメント&セミナーを取り入れて新たな視野をプラス!
カウンセリングの力を伸ばしたい、現状の施術や指導では限界を感じているという方は、サロンのコンセプトに合致するようなセミナーや技術講習に行ってみると良いでしょう。現状を打破する解決策が見出せるだけでなく、他サロンとのつながり、施術の成功事例(ノウハウ)なども得られます。ぜひ一度行動を起こしてみてください。

♡エリアの☑が多いサロンは…

インナーケアの充実で食生活の改善をサポート!
これ!という店販品が見つかっていない、食事だけでの改善が難航しているという方は、新たなインナーケア商品を探す努力を。人間にとって必須な栄養素を必要量摂取するにはサプリメントの力も必要です。理念や開発の目的、会社としての想いに共感できるところを見極めて、試してみてください。

♧エリアの☑が多いサロンは…

サポートアイテムを増やしてよりパーソナルな提案を!
ホームケア美容や最新の美容情報の獲得に積極的なお客様が多ければ、そんな方々に刺さるようなアイテムの用意を。健康美は、決してトリートメントやインナーケアだけで成り立たないものです。自分自身が商品知識を豊富に持ち、お客様の悩みに合った商品を提供できるように取りそろえてみてください。

まとめ~お客様を健康美へと導けるサロンを目指しましょう

コロナ禍で、人々の美容に対する意識にも変化が生まれている現在、エステティシャンにも「美」だけでなく「健康」が求められる時代になってきています。

今回は、お客様を「健康美」へと導くためのアプローチを「mental」「physical」「knowledge」の3つの観点からご紹介しました。

こうしたテクニックを取り入れることで、お客様に対して、これまでよりもさらに細やかなケアが可能になるはずです。足りないと思ったところはチェックシートも参考にしながら、サロンの改善に役立ててみてください。

お客様を美しく、そして健康をサポートできるエステティシャンを目指しましょう。

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