エステティシャンの育成や指導などに尽力されているベテランオーナーが、自身が経営や人生の選択に迷った際に読み返すバイブルを教えてもらう「あの人のバイブル」。
今回は、「Esthetic Cafe むかしむかしあるところに/moimeme(モワメイム)」のオーナーとして活躍されている、勝野 クミ子先生の人生のバイブルを教えていただきます。
お話をうかがったのは
Esthetic Cafe むかしむかしあるところに/moimeme(モワメイム)
勝野クミ子 先生
エステティシャン歴32年、開業20年目のエステティシャン。
美容師やリハビリ整体師、カフェ、各種イベント企画、コミュニティ運営、商品制作や販売などの経験を持ち、お客様の美と健康をサポートしつつ、部活化コミュニティも楽しんでおります。
リットリンク:https://lit.link/moimeme
Instagram:@moimemekumi
渋沢 栄一著『論語と算盤(KADOKAWA)』
現在、大阪でエステサロンを経営されている勝野先生。
勝野先生がバイブルとして挙げられたのは、渋沢 栄一先生の著書『論語と算盤』です。
勝野先生の今の経営にも役立っているというこの本。自分にとって大切なことを再確認するのにぴったりな作品だそうです。
勝野先生にバイブルについてのお話をうかがいます。
作品との出会いを教えてください
昔から実家には渋沢 栄一先生の書籍がたくさんあったため、勝手ながら縁を感じており、読んでみようと思いました。
その中でも『論語と算盤』という、一見真逆であるかのような言葉を並列させている題名に惹かれました。
作品と出会った時の自分はどのような状態でしたか?
私は今年で経営を始めて20年目になるのですが、この作品を改めて手に取ったときは日本の未来や自分の将来、そして経営について深く考えていた時期でした。
その理由は、新型コロナウイルスの流行による市場の大きな変化です。外出が制限され、仕事もどうなるかわからず、みなさん不安を抱いていたと思います。
エステティックは衣食住のように生活に不可欠なものではないため、どうしても優先順位が下がってしまいがちです。そのため、新型コロナウイルスの流行を機に、来なくなるお客さんが多いのではないかと考えていました。
エステサロンの数も年々増えている中で、これまでの自身の経験や知識を振り返り、これからのサロンの方向性をどうしようかと悩んでいたときに、渋沢 栄一先生の作品を読み直しました。
作品との出会いをきっかけにどのような変化があったか教えてください
実は、私は起業してから10年ほどは横のつながりがほとんどありませんでした。当時は今のようにSNSもそれほど流行しておらず、Facebookのコミュニティに入るくらいでした。
その中で、自身の経営論を語る人が多かったのです。その人たちは数字や売上のことを話していましたが、私自身は数字をそれほど意識せず、好きなことを続けてきたタイプでした。そこで大きなギャップを感じたのです。
この作品では、経営するうえでは数字だけではなく、人間性も大事だと書かれています。渋沢 栄一先生は経営のイメージが強いと思いますが、実は多くのボランティアをしています。その人間性に惹かれる人も多かったようです。
この作品を読んで、自分が今まで抱いていた経営に対する考え方の正しかった部分と間違っていた部分が明らかになり、ギャップを感じていた部分の整理をすることができました。
数字を意識する経営の能力と、サービス精神でお客様をおもてなしする人間力の両方が必要だったのです。
最近は、サロンの売り上げアップに関するセミナーやコンサルが増えてきています。「数字を意識しないといけない」という風潮がある中で、焦ってしまいそうなときにこの作品を読み返し、人間性の部分も見失ってはいけないと再認識します。
この作品をバイブルとして挙げた理由は?
この作品には、「人間の観察力のポイント」「成功者とは」「数字以外の大切なこと」「人間力のみがき方」など、たくさんのことが書かれています。
特に好きな「人間の観察力のポイント」という部分に「3つの見る」というものがあります。「結果を見る」「行動を起こした理由を見る」「何で満足するかを見る」の3つです。
結果と行動を起こした理由は、いわば誰でも取り繕うことができます。例えば、ゴミを拾って「街をきれいにするため」と理由を話すことは誰でもできます。
ただ、何で満足するかは取り繕うことができません。例えば、エステティシャンがお客様に施術をしたときに、売上が上がって満足する人もいれば、お客様が喜んでくれて満足する人もいます。ここは取り繕うことができず、どうしても態度や表情に出てしまうものです。
エステティシャンや経営者に関わらず、人として他人の本質を見るために重要なことだと感じました。今でも実践しているため、重要なバイブルになっています。
経営において数字以外の大事なことを学べるバイブル
勝野先生のバイブルは、数字だけではない、経営に必要な考え方を学べる渋沢 栄一先生の本でした。
●勝野先生からのメッセージ
真の成功は数字だけではなく、人間性や経験に根差しており「知・情・意」のバランスが不可欠だと考えます。成功とは「どう生きるか」ということで、物質的な豊かさだけでなく、内面からの満たされ方も重要です。
自己の強みはさまざまですが、私たちは直接お客様の肌に触らせていただくので、信頼関係がなければ成り立ちません。
売上に関するセミナーなども増えていて、さまざまな意見に左右される機会が多いと思います。ただ、他人に左右されて疲弊してしまうのは、とても寂しいことです。
自分が今やるべきことは何か、自分が何で満足するのかを考えるのが、すごく大事だと感じます。みなさんには自分らしくいてほしいと思います。決して自己犠牲にはならず、この仕事を楽しんでください。
時代や状況が変わっても、人としての価値観や接客の大切さを忘れず、一緒に歩む仲間として共に頑張りましょう。