女性の生活を向上させる「フェムケア」。サロンに取り入れたいと思っていても、「まずは何をすればいいのか」と難しく考えてしまう人もいるはず。そんな方に向けて、長年第一線で活躍されているお二人にエステサロンにおけるフェムケアの重要性をうかがいました。
フェムケアとは
Feminine (女性) + Care (ケア)
「Feminine (女性) 」と「Care (ケア)」を組み合わせた造語。体の機能やホルモンバランスの変化によって起こる女性特有の悩みを解消するための製品やサービスを指します。エステティック業界においても女性の美と健康をさらに引き出す製品やメニューを提供するサロンが増えています。
フェムケアには確立された分野はなく、女性特有の不調を引き起こす要因となりやすい生理・PMSや妊活、 更年期などがあげられます。ほかにもメンタルヘルスといったストレスの軽減・改善を図る分野など、 市場が拡大しています。
お話をうかがったのは
株式会社SAKITUE 代表取締役社長
山内 尚子さん
大手化粧品会社やサロン勤務を経て、自身の更年期を機に女性の一生を応援したいと (株)SAKITUEを設立。フェミニンケア製品を企画開発し、「至福のちつケア』を出版。 ヴァージナル・セルフケアの創始者・咲杖尚伽としても活動。
バースハーモニー美しが丘助産院
一般社団法人 日本フェムケア協会 代表理事
冨田 愛さん
18年間、 3.5万人の女性に触れた現場経験から(一社)日本フェムケア協会を設立。 エアメソッドフェムケア・ファーストフェムケア®を考案し、現在はフェムケアスペシャリストの養成やフェムケアの啓蒙活動に尽力。
「抵抗はある」けれど関心を寄せる女性が急増
ー長年第一線で活躍されているお二人から見て、日本のフェムケアの”現状“をどう感じていますか?
冨田さん(以下、敬称略)
私は約5年前からお客様に、デリケートゾーンケア用のオイルをプレゼントし、使い方やフェムケアの大切さなどをお伝えしてきました。今では、そのほぼ全員が製品を購入し、“ケアは当たり前のもの”と習慣付けてくれています。フェムケアという言葉が浸透し、最近ではエステティックの延長としてデリケートゾーンもケアするということに意識を向けるお客様も増えたと感じています。
山内さん(以下、敬称略)
先日、私どもが開催した膣ケアに関するオンライン講習には、約200名もの方が参加。その際に行なったアンケートで、実に4割が「抵抗はあるけれど、必要ならフェムケアに取り組みたい」と答えています。 まだまだデリケートゾーン、特に膣まわりのケアに抵抗を感じる女性も多いと思いますが、得られる変化は本当に驚くほど!だからこそ「ちょっと抵抗はあるけれどがんばりたい」という方のやる気をより引き出していきたいですね。
女性の美と健康のすべてはフェムケアで引き出せる!
―フェムケアに取り組むことで、どのような変化が期待できますか?
山内 :これまで実際にお客様と関わるなかで、女性にとって「膣まわりのコリ」こそが、 さまざまな不調につながる”諸悪の根源”であると実感しています。今、尿漏れに悩む女性が急増していますが、膣まわりをほぐして体のめぐりをよくすることで7割の方が改善できるといわれています。
冨田:それに出産時の状態も全然違います!!私は助産院に勤務して4年目になりますが、きちんと膣のセルフケアをしている方は、出産時に会陰がしっかり伸び縮みするので、会陰切開や会陰裂傷を起こすことがほとんどありません。やはりメスを入れない“自然な分娩” は、 産後の回復が早く、痛みや違和感が続くといった後遺症に悩まされにくくなるので、メリットは非常に大きいですよね。
山内:デリケートゾーンケアは、 その狭いエリアにかかわらず、首や肩、頭皮など、全身のコリを癒してめぐりを改善するだけでなく、高いリラックス効果で眠りの質も変えるといわれています。 膣まわりをケアされている方は、こうした“よい循環”によって、肌も髪も美しく若々しい方も多いように思います。
冨田:10代、20代の若い女性の多くは、女性特有の悩みをまだ自分事として真剣に考えられないかもしれません。でもまずは「こうした不調が起こる可能性がある」ことを知ってもらい、未来の体と良好に付き合うための意識を持ってもらいたいです。
サロンでの「プロのケア」がフェムケアの未来を変える
ー「エステサロンでケアする」ことのよさはどこにあるとお考えですか?
冨田:例えば、プロからアドバイスを受けながらするパーソナルジムでのトレーニングと、自己流のトレーニングでは、一年後の成果が全く違います。 フェムケアも同じで、 ホームケアが中心だったとしても、プロからのケアやアドバイスを定期的に取り入れることで、意識も効果も段違いに変わると思うのです。
山内:フェムケアにおいては、ただデリケートゾーンに専用の石鹸やオイルを塗るというだけではなく、きちんと正しい製品やケアの知識と見極める目を持ち、それを実行に移すということが大事。最近は、フェムケア製品を導入する際にセミナーや講習会を実施するなど、エステティシャンがフェムケアの知識を身に付けられる機会も増えています。世間の高まる需要に、エステティシャンである我々も対応しやすいよう、フェムケア業界のメーカーは手厚い支援を用意してくださっています。 このチャンスに乗らない手はありません。お客様が一人で悩みを抱え、独自に調べたさまざまな情報に翻弄されているときに、手を差し伸べ、きちんと指導し、導いてあげるのが私たちの役割。
冨田:なかには、フェムケアを難しく、手が出しにくいものと感じる人もいるかもしれません。 しかし出産や生理は、まさに女性の「本能」ですよね。だからフェムケアの原理・原則は、一度火がつけば女性であれば誰もが本能で理解し、実感できるものであるはず。 エステティシャンやセラピストは、その火をつける役割を果たすことができます。そう考えると、エステサロンは本当に今、日本の女性にとってエステサロンは最も必要な“心と体の拠り所”なのではないでしょうか。
山内:「フェムケア=膣ケア」というイメージが広がっておりますが、 食生活や生活習慣なども全部つながっています。 まずはあまり難しく考え過ぎずに食事管理などの身近な部分から始めてみてはいかがでしょう。サロンは本来そういった部分もサポートしていますから、指導につなげやすいところもありますよね。 またフェムケアメニューの導入を後押ししてくれるメーカーもいるので、まずは相談するのもいいと思います。
冨田:私たちエステティシャンは「未病を癒す」という重要な任務をもっています。 不調に悩む女性たちがサロンに通い、ケアし、状態を底上げする。それを「当たり前」とするためにも、もっとフェムケアの重要性を啓蒙していきたいと思っています。
今回は山内さん、冨田さんのお2人に「エステサロンにおけるフェムケアの重要性」をうかがいました。エステティック通信5月号では、女性の悩みに向き合うメーカーの取り組みや製品も紹介しております。
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