人生の切り開き方を学べるバイブル
エステティシャンの育成や指導などに尽力されているベテランオーナーが、自身が経営や人生の選択に迷った際に読み返すバイブルを教えてもらう「あの人のバイブル」。
今回は、「TINA COLLECTION」のオーナーとして活躍されている、山本賀世子先生の人生のバイブルを教えていただきます。
お話をうかがったのは
ティナコレクシオン 代表取締役
山本賀世子 先生
1953年 広島県府中市生まれ
1973年 美容師免許取得
1976年 ロンドンのヴィダルサスーンスクールに入学
1976年 パリのエステスクールに入学、卒業後ホテルニッコードパリに勤務
1979年 帰国、化粧品会社に勤務
1988年 サロン開業、国際エステティック免許インファゴールド取得
2003年 ジョエル・シオコ女史 スキュルチュールマッサージ 技術取得
2005年 ローズマリー・ヴェルネ女史 デジテネルジー 技術取得
2008年 マリーフランス・ミュレール女史著 レフレクソロジーファシアルと出会い
2017年 日本版フェイシャルリフレクソロジー大全を翻訳、自社出版
2020年 頭蓋骨リフレクソロジーの吉田千春先生と出会い、技術取得
取得した全ての技術を日々の施術に導入し、クライアントの美容と健康を管理、指導を行っている。
開業以来、未知の技術を探し、習得するべく一つずつ、その扉を押し開きながら今日に至る。
Patrick Mauriès著『Le monde selon Coco(FLAMMARION)』
40年以上エステに携わり、現在も活躍されている山本先生。
山本先生がバイブルとして挙げられたのは、Patrick Mauriès氏の著書『Le monde selon Coco』です。
山本先生が好きな言葉が書かれているというこの本。まさに山本先生の気持ちを代弁してくれているそうです。
山本先生にバイブルについてのお話をうかがいます。
この作品の好きなところは?
この本はフランスで購入したため、まだ日本語版が出ていないかもしれません。このタイトルを日本語で言うと、「ココの世界観」というのが、最もふさわしい訳だと思います。
私がこの本で一番好きなのは、「On croit que toutes les portes se sont ouvertes devant moi , mais je les ai poussees,,,,」という言葉です。「人は私の前にある扉はすべて開かれているというけれども、実はその扉を押したのは私なのだ」という意味の言葉です。
私自身、「山本さん本当に運がよかったわね」「一人勝ちしているわね」「あなただからできたのよ」などと言われることがありました。ただ、この言葉のように、「私は自分でここまでやってきたの」という想いがあったのです。
だから、この言葉と出会ったとき、まさに自分の気持ちを代弁してくれていると感じました。例えるならば、雷に打たれたような衝撃を感じたのです。
今も自信をなくしたり、思うところがあったりしたときには、このページをよく読み返します。
作品との出会いを教えてください
実はこの本は、比較的最近に出版された本なのです。私が2020年1月の末にパリへ行ったときに「Le Bon Marché」というデパートの書店で購入しました。
先ほどの言葉に感銘を受けて、この本を購入したのですが、フランスでは、ココ・シャネルの名言集のような本はたくさん出ています。私自身もそのような本は持っていたのですが、改訂版のような意味合いで購入させていただきました。
独立したときはどんな状況だった?
私は開業して35年目なのですが、ちょうど10年ほど経ったときに「このままでいいのか?」と思うことがあったのです。
私は若いころに本場パリでエステの学校へ通っていました。そこでは技術だけでなく、女性がどのように生きていくのかに関しても学びました。そして日本に帰ってきて、化粧品会社の中でサロンの運営を任されたのですが、日本とパリのエステに関する考え方の違いをはっきりと感じました。
そこで、理想のサロンを運営するには独立するしかないと思い、今に至ります。
そのため、今私がやっているのは、フランスにこだわって、フランスと同じようなシステムでやっていくことです。チケット制ではなく一回ごとに料金をいただき、メニューはなく、そのときのお客様の状態にあわせたお手入れをさせていただいています。
独立当時は化粧品会社がアンテナショップを兼ねたサロンを運営していることが多く、個人が独立してやっていくには厳しい状況でした。そのため、お店を借りることもできず、自宅の6畳の部屋でベッドを一つだけ置いてスタートしたのです。
今でこそマンションの一室で開業する方は多くなってきましたが、当時は珍しく、お客様に「意外とちゃんとしているんですね」と言われることもありました。そんなときもありつつ、今でもエステに携われていることはとてもうれしく思います。
ココ・シャネルの言葉との出会いをきっかけにどのような変化があったか教えてください
先ほど一番好きな言葉として紹介した「On croit que toutes les portes se sont ouvertes devant moi , mais je les ai poussees,,,,」という言葉ですが、この言葉は、私がエステティックという仕事を始めたときから今に至るまで、常に心に留めています。
開業以来、スキュルチュールマッサージやデジテネルジー、フェイシャルリフレクソロジーや頭蓋骨リフレクソロジーなど、いわばいくつもの扉を開いてきました。
特に独立10年目以降は、毎年必ずパリへ足を運び、何か新しいものを持って帰ってくると決めて行動しています。ココ・シャネルの言葉のように、自分から扉を開けようとして動いていたのです。
そこで、さまざまな方との出会いがありました。私から技術を教わりたいという方もおられ、そのような方には、お金を取らないから技術をより後の方へつなげていってほしいと告げ、自分が持っている技術を惜しみなく伝えました。
このようにどんどん扉が開いていくのですが、やはり自分で扉を押さないとあちらからは開いてくれないのです。だから、自分で行動していくのは大事だと感じます。
自分の人生は自分で作っていくことの大事さが学べるバイブル
山本先生のバイブルは、ココ・シャネルの言葉から人生の切り開き方を学べるPatrick Mauriès氏の本でした。
●山本先生からのメッセージ
エステティックという素晴らしい仕事に出会った若い方々に、私からこの言葉を送ります。
「あなたの前にある扉を強く押してみて下さい。あなたが求めた世界が現れます。
そして、更に進むとまた、一つ扉があります。
それも強く押して下さい。そして進むと、さらに扉が現れます。
この仕事は扉を押して自分が求めるものを追い続ける連続なのです。
このわくわく感がある限り、私はやめようなんて思えません。」
ココ・シャネルも同じ事を言っています。
「Je ne finis jamais une robe.
Je les travaille jusq’au dernier jour.
Parfois jusqu’a la derniere nuit.
私は服を作ることを決してやめない。
私は命がつきる最後の日まで服を作り続ける
時として、最後の夜までも。」
既成概念にとらわれずに、自分が興味を持ったこと、より深く探求したいことがあったら、分野が違っても扉を開けるかの如く、見て体験して欲しいです。今までの自分の世界だけで考えるのではなく、他の分野のお仕事の方などと、積極的に交流を持ってみてください。