年齢肌におけるシミのできやすさに対し新知見を発表

 

ロート製薬株式会社(大阪市生野区/代表取締役社長:杉本雅史)は11月4日、年齢を重ねることでできやすくなるシミに関する研究を進めた結果、老齢細胞にてエンドセリン-1(ET-1)※1の分泌に繋がるメカニズムを発見し、δトコフェロール※2がその分泌を抑制する働きがあることが明らかになったと発表した。

同社はこれまでに、美容医療の施術研究から、シミ部位のケラチノサイトの増殖を促進する作用機序を見出した(注)。しかし、シミ形成におけるケラチノサイトの寄与に関しては解明されていない分が大きいものがあった。

そこで今回、加齢によってケラチノサイトに起こる遺伝子発現変化がメラノサイトへの刺激に繋がるか、研究を行った。

(注)IPL光治療による美白メカニズムの解明(第36回日本美容皮膚科学会)

同社は今回の研究で、次の3点の成果をあげた。

1)老齢由来のケラチノサイトはPHGDH※3発現が低下した
それぞれ3ドナー由来の若齢由来ケラチノサイトと老齢由来ケラチノサイトを用いて、DNAマイクロアレイ法を用いて遺伝子発現の差異を解析した(図1)。その結果、PHGDH発現の低下が確認された。再度リアルタイムPCR法を用いて発現の差異を確認した所、老齢由来ケラチノサイトではPHGDH発現が低下していることが分かった。

図1

2)PHGDH発現が低下している細胞ではET-1分泌量が亢進した
PHGDH発現が低下しているケラチノサイトに起こっている現象を解析するため、RNA干渉を用いてPHGDH発現低下細胞を作製した。72時間培養した上清を用いてメラノサイトを刺激する因子の一つであるET-1の分泌量を定量した結果、発現が低下していない細胞と比較して有意に分泌量が亢進していることが分かった(図2)。その分泌量は紫外線(UVB)を照射した細胞から分泌されるET-1量と同等の分泌量であることも示された。

図2

3)PHGDH発現低下により亢進したET-1分泌をδトコフェロールが抑制させた
PHGDH発現低下により亢進したET-1分泌を抑制することでメラノサイトへの刺激を正常化することを目指し検討を行った。ET-1分泌を抑制する成分の探索を行った所、δ-トコフェロールに有意なET-1分泌抑制作用を見出した(図3)。

図3

上記の、老齢由来ケラチノサイトを用いた研究により、PHGDH発現が低下し、それによりメラノサイトへ作用してメラニン産生を促進する因子であるET-1分泌が亢進されることが確認できた。

また、分泌が亢進したET-1量をδ-トコフェロールが抑制することが明らかとなった。

同社は今後「本研究成果から、δ-トコフェロールはケラチノサイトに働きかけ、メラニン合成を抑制する作用が期待されます。今後も、皮膚の抗加齢研究を通じて美と健康の増進に貢献していきます」としている。

※1 エンドセリン-1(ET-1)
エンドセリン受容体に結合し、血流や細胞増殖を制御することが知られている。またメラノサイトにおいて発現しているエンドセリン受容体に作用し、メラニン合成を促進することが知られている。

※2 δ-トコフェロール
脂溶性の抗酸化物質であるビタミンEの一種。

※3 PHGDH遺伝子
D-3-ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ(D-3-phosphoglycerate dehydrogenase)をコードする遺伝子。アミノ酸の1つであるセリンの合成に関与することが知られている。