美容と医療の“違い”こそ“魅力” 協力体制を築き未来を変える【グローバルサイエンス株式会社 会長 笠原 征夫×やさしい美容皮膚科・皮フ科 秋葉原院 院長 宇井 千穂】

 

サロンへのバックアップ体制が「当たり前」になるよう、先陣を切ってサポートを続けていきたい。

笠原 征夫

グローバルサイエンス株式会社

会長

笠原 征夫

広告代理店・電通グループ、製薬会社、化粧品会社での勤務を経て、33歳で独立。その後エステサロンにおける美容機器の潜在的需要に着目し、開発製造に着手。さらに富士山の麓に酵素ファスティングを中心とした「北斎スパ」を開業。現在は医療機器の開発も手がけ、最先端の美容医療を目指している。

エステティックには、医療とは違ったよさがある。正しい魅力を正しい手段でアピールするべき。

宇井 千穂

やさしい美容皮膚科・皮フ科 秋葉原院

院長

宇井 千穂

1969年生まれ。1990年準ミス日本受賞。全日本空輸(株)客室乗務員を経て、北里大学医学部を卒業、皮膚科医・美容皮膚科医として勤務。2019年に「やさしい美容皮膚科・皮フ科 秋葉原院」を開院。活性酸素とSODの研究による天然の治療薬を使い、アトピーを中心とした皮膚疾患も診察している。

機器選びのポイントはエビデンスの「信頼性」

――コロナ禍が始まって3年目となり、クリニックに訪れる患者さんの意識やニーズに変化はありますか?

宇井先生(以下敬称略) コロナ禍以前は、もとから美容への意識が高い方が「今よりもっときれいになりたい」と、より高いレベルの美を求めて来院されるケースが多かったように思います。しかし、今は来院される方の悩みも変化しており、例えばマスクの影響で、顔の上部は問題ないけれど、下部にトラブルがある人も。これまでにない悩みに戸惑い、来院される方が増えましたね。そして、生活習慣の変化などで患者さんの抱えている肌トラブルの原因は複雑になっているので、治療に機器を使う場面が増えました。

――クリニックで使用する機器を選ばれる際にはどのような点にこだわっていますか?

宇井 私は医療従事者ですから、やはりエビデンスを重要視します。どのメーカーさんもエビデンスを提示していますが、その内容、つまり「信頼性」の部分までしっかり目を通すようにしています。

笠原会長(以下敬称略) 特にどのような部分を見て判断していますか?

宇井 例えば、エビデンスとして紹介されていても、根拠となる症例数が少ないケースには注意しています。ほかには、どのような機関で分析しているか、分析する環境がどれだけ厳粛に守られているか、などです。ただ、エステティック用機器は、薬機法によって効果を提唱できませんし、何を基準に選ぶのかの判断も難しそうですね。

笠原 シビアに言えば、エステサロン向けの機器も化粧品も細胞まで変えるような結果を出すことは許されていません。そういった点でエステティックならではの「難しさ」もありますね。

エステ独自の「強み」を認識・アピールするべき

――今はエステティックと医療の境界線が曖昧になっているとの声もありますが、それに関してはどうお考えですか?

宇井 「美容医療と同レベルの……」といったサロンの広告を目にすることもありますが、私から見れば「なぜそんなアピールをするのだろう」と不思議に感じます。私は医療に近いものが必ずしも“よいもの”だとは思いませんし、エステティックには、医療にはない「売り」や「よさ」があるはず。そこを見つけ、アピールすべきだと思うのです。

笠原 宇井先生が考えるエステティックならではの「売り」や「よさ」とはどんな点ですか?

宇井 正直、あまり言いたくないのですが……(笑)。医療の場で行なう行為は「治療」になりますから、痛みやダウンタイムが発生することもあります。でもエステティックは効果を追求しつつ、リラクゼーションも提供してくれますよね。自分へのご褒美として「長く継続して通いたい」と考える人もたくさんいるのではないでしょうか。

笠原 日本では、法律上でエステティックの範疇が明示されていません。大原則として「細胞に変化を及ぼすような機器や化粧品は使ってはいけない」のですが、その部分も非常に曖昧なため、多くのサロンが医療並みの結果を追求するといった混在状態が続いています。

宇井 そうですね。その原則をもとに見ると医療とエステティックは「結果」の面で、大きな違いがあるように感じるかもしれません。でもエステティックにはほかにも素晴らしい利点がたくさんありますから、医療と競わずに嘘なく正しい情報や魅力を打ち出していくことで、より人々から求められる存在になると思います。

正しい知識と確かな技術が正しく流通する環境整備を

――さまざまな情報があふれる今、「本当に正しい情報」を発信することも、見極めることも難しいですよね。

宇井 おっしゃるとおりです。クリニックに来られる患者さんのなかには、SNSに書かれていることがすべて正解だと思っているのか、診断結果に対して「Twitterではこう書いてありました」と異議を唱える方もいます。情報のソースやエビデンスに疑問を感じることなく、すぐに信じてしまう風潮には、少し怖さを感じます。

笠原 メーカーとしては、発信する側の問題を注視しています。よくあるのが施術の料金、機器の販売価格の安さばかりを前面に押し出した広告の展開です。でも実際、その額だけ支払えば、望む施術・治療のすべてを受けることが可能なのか。そして、機器を購入した後のサポートや研修体制については全くわからない。購入してから「こんなはずでは……」となるケースも多いはず。

宇井 特に美容機器に関しては「メンテナンスが必ず必要になる」ことをもっと考えて購入すべきです。価格の安さにひかれて購入したものの、メンテナンスにものすごく時間がかかったり、そもそも応じてもらえなかったり。ひどい時には、説明書すらまともにそろっていないなんてケースもあると聞いていますから。

笠原 こうした現状を打破すべく、弊社は2023年、全国8カ所にメンテナンスや研修を行なうセンターを設置予定。すべてに医師を配置し、專門的なバックアップを受けながら、機器の検証やメンテナンス、導入後の研修レベルを全国区で上げていくつもりです。そしてこうした取り組みが「当たり前」になるよう、一つの成功モデルをつくり上げていきたいと考えています。

宇井 それは素晴らしい取り組みだと思います! どんなによい機器でも、正しく使わないと結果が大きく変わりますし、リスク発生率も確実に上がりますから。

笠原 医療とエステティックは敵対するのではなく、サロンもメーカーももっとドクターの知見を取り入れ、専門的な視点での検証やメンテナンスを展開していくべき。それが「すべてが曖昧」な状態が続く美容業界を変えるきっかけにもなるのではないでしょうか。

経営者の選択“成功の鍵” ー収益性重視の経営でコストダウンを目指す

40年ほど前に初めて会社を立ち上げたころは上場を目指していましたが、会社の拡大とともに組織力の低下を感じることが増え、売上追求型から収益性を重視する経営方針へと転換。美容機器は適正価格がわかりにくく、驚くほど高額な価格のものも。そこで弊社はこの経営方針転換によってコストダウンを実現し、より多くの方が手軽に美容機器を試せる環境の整備にも取り組んでいます。それによって結果的に企業とお客様、両者にとって望ましい経営ができていると思います。

COMPANY DATA

グローバルサイエンス(株)

業務用美容機器を中心に、化粧品・店販製品・OEM製品の提案、製造販売を手掛ける。先端技術を導入した安心・安全な業務用美容機器を提案するため、全国各地にメンテナンス部門を設置。専任技術者を配し、万が一のトラブルにも速やかに対応できるサポート体制を構築。常に技術を革新し、新しい価値を提供することを目指している。

やさしい美容皮膚科・皮フ科 秋葉原院

美容皮膚科において、シミ治療をはじめとしたアンチエイジングを得意とする医療を提供するほか、皮膚科医としてアトピー性皮膚炎を中心とした皮膚疾患の診察も行なう。院長は本や雑誌の執筆をはじめ、web・雑誌での連載やサプリメント・化粧品の監修など、多方面に活躍の場を広げている。